横浜の川を歩く12 大岡川①(源流域)
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大岡川は、延長約14kmの二級河川だ。円海山を源流とし、上大岡で日野川と合流して伊勢佐木町、野毛町、桜木町など、横浜市の中心地を通って横浜港に注ぎ込んでいる。
見どころの多い川なので何回かに分けて紹介するが、今回は源流域をレポートする。
上の写真は、「大岡川源流域」の表示杭が立っているあたりだ。このへん一帯は入り組んだ谷に囲まれており、幾筋もの小さな流れが集まって大岡川の源流をなしている。
細い流れが集まり、少しずつ水量を増していく。
おおやと広場。このあたりは「大岡川源流域小川アメニティ」で、ところどころ休憩できる場所がある。
アブラハヤがたくさん泳いでいた。
大岡川は円海山が源流とされているが、金沢自然公園のしだの谷からの流れも、遊水池を介して大岡川に流れ込んでおり、ここも源流のひとつといっていいだろう。
シダの生い茂る「しだの谷」からの流れは、横浜横須賀道路釜利谷ジャンクションの下を通って遊水池に続いている。
遊水池からの開口部。ここから先の流れは、源流と呼ぶにふさわしい趣がある。
小川のほとりにはスミレが群生し、歩く人の目をひきつける。
右は円海山からの源流で、左が遊水池からの流れ。ここが合流地点だ。
椿の向こうに、横浜横須賀道路の高架が見える。
「氷取沢(ひとりざわ)小川アメニティ」の遊歩道。
小川アメニティを抜けると、開けた場所に出る。氷取沢農業専用地区で、市民菜園などもある。菜園の奥に、トイレが設置されている。秋にはコスモスが咲いて、華やかな景色になる。
農地のあたりから、護岸が整備されている。右の建物は、氷取沢農業専用地区のための、かん水施設だ。
氷取沢神社の社殿側から、表通りの笹下釜利谷道路を望む。大岡川は、神社の境内を右から左に流れていく。
氷取沢(ひとりざわ)という耳慣れない地名には、特別ないわれがあるのだろうか。江戸時代に著された「新編武蔵風土記稿」の編者も興味を持ったようで、くわしく考察している。煩雑な記述なので、わかりやすくまとめてみた。
「氷取沢村は、往古には長沢村と呼ばれていた。村内宝生寺の僧が話すところによれば、後醍醐が天皇であった年の6月(旧暦なので、真夏だ)に深山から氷を取って北条高時に献上したところ、高時はこれを喜び、村の名を氷取沢村に改めたそうだ。しかし、この説には信憑性がない。なぜなら、後醍醐天皇より100年ほどさかのぼる吾妻鏡の建暦3年9月22日条に「火取沢」の記述があり、この地はすでに火取沢と呼ばれていたのだ。火と氷は音訓が同じなので、両方の漢字が適宜用いられていたのだろう」と書かれている。
ウェブサイト「はまれぽ.com」のレポート「磯子区氷取沢町の名前の由来は?」では、かつてこの辺りでは砂鉄が取れたため鍛冶場があり、火取沢の“火”はこのことに関係しているという説を紹介している。
いずれにしても氷取沢の由来は、伝承としてとらえておくのが無難だろう。
氷取沢神社の参道前には、笹下釜利谷道路が通っている。港南区上大岡と金沢文庫・金沢八景方面をつなぐ幹線道路だ。大岡川は、この道を縫いながら流れていく。
ここから先の上大岡までは、「横浜の川を歩く13 大岡川②」でレポートしたい。
(2021年3月記)