横浜の川を歩く15 舞岡川(まいおかがわ)

舞岡川は、境川水系の河川である。柏尾川との合流地点から舞岡川遊水池(右支川合流点)までの1640mが二級河川、そこから上流へ510m(地下鉄舞岡駅付近)までは準用河川で、その先は普通河川だ。(「横浜の川」横浜市道路局河川部)

横浜市のウェブページでは舞岡公園周辺を源流域としているが、約30ヘクタールの公園なので、広すぎてどこが源流なのかわからない。そこで、河口から上流に舞岡川をさかのぼり、源流を探すことにした。

 

f:id:konjac-enma:20210516104532j:plain正面の建物群は、ブリジストン横浜工場だ。舞岡川は工場の中を流れ下り、柏尾川に合流している。

 

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柏尾川との合流地点から200mほど上流で、国道1号線を抜ける。国道1号といえば、箱根駅伝を連想する方も多いだろう。戸塚駅周辺には箱根駅伝がデザインされたマンホール蓋がたくさん設置されているから、選手たちはこの道を走ると思っている人がいるかもしれない。ところが、箱根駅伝のコースは不動坂から横浜新道方面に向かうため、この道は通らないのだ。

f:id:konjac-enma:20210516111541j:plain LocalWikiより

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現在は脇道だが、ここが旧東海道だ。 国道1号から150mほど上流になる。水位計とカメラが設置されていて、ほぼリアルタイムで河川の様子を確認することができる。

水位観測地点詳細情報(現在)

 

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柏尾川との合流地点から1300mほど上流に、神奈川中央交通舞岡営業所がある。神奈川中央交通(通称「かなちゅう」)は、神奈川県民にとって最もなじみ深いバス会社だ。ウェブサイト「Wikiwand」に、神奈川中央交通について詳しく記述されているので、その一部を紹介したい。

神奈川中央交通には「日本初」の取り組み実績がたくさんある。

・乗車時に整理券を取り、降車のとき整理券と照合して運賃を支払う「整理券方式ワンマンバス」を1962年から運行した。

・割増料金を適用した深夜バスを1970年に運行開始した。

・多区間運賃路線でのバスカードを1988年に導入した。

・通勤定期券を所持している利用者と、同伴の家族が土休日に一般路線を利用する際には1回の乗車が現金100円になるという環境定期券を、1997年に導入した。

舞岡営業所は広い敷地を有しているが、2011年のデータでは、189台の車両が登録されている。

 

 

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舞岡川遊水池は、平成25年に完成した地下貯留式の遊水池だ。貯留容量は、55,200m3である。舞岡川右支川との合流地点で、その上カーブしているから、豪雨時には水の勢いが激しい。その場所に取水口を設け、洪水を防いでいる。
河川遊水池は地上に水を貯めるオープン式が一般的だが、この遊水池を地下式にした理由は、隣にある舞岡小学校児童の安全を考慮したからかもしれない。

ゲリラ豪雨に象徴されるように、大量の雨水が短時間で川に流れ込み、河川が氾濫する事態が多数発生している近年、遊水池の役割は重要なものとなっている。

横浜市記者発表資料 令和元年台風第19号等における河川遊水地の貯留実績について

 

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舞岡公園の案内板。舞岡川は横浜市営地下鉄舞岡駅付近で二手に分かれるが、上の流れが舞岡川と記載されている。

 

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道岐橋から舞岡公園入口までの約1.8kmが舞岡町小川アメニティだ。色とりどりの草花が植えられ、メダカが泳ぎ、ヌマエビやカワニナを見ることができる。手入れが行き届いていて、川を愛する地域住民の思いが伝わる。

 

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舞岡八幡宮。長い石段の上から、参詣者を見下ろすように鎮座している狛犬のシルエットが印象的だ。この神社は、由緒によれば乾元元年(1302)に石清水八幡宮を勧請したのが始まりで、村の鎮守として崇敬され、明治6年(1873)に村社となったそうだ。忌竹をめぐらし中央の大釜に熱湯をわかし巫祝が呪言して笹葉に浸した湯を神前と参詣人にまく、湯花神楽神事を4月15日に行っている。

境内は深閑とした雰囲気が漂い、古社の風格を感じさせる。

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狛犬にも、ひと言ふれておきたい。昭和初期に戸塚の石工が制作したものだが、荒削りでありながら、姿がいい 。大正・昭和の狛犬は類型的で面白くないのだけれど、この作品は頭の形や表情が個性的で、狛犬として出色のできばえだと思う。

 

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舞岡町小川アメニティをさらに進むと、しだいに自然の風景になってきた。この場所だけキショウブが群生している。そういえば近年、キショウブを見かけることが多くなった。ウィキペディアによると、

観賞用に栽培されているハナショウブには黄色系の花がないため、その貴重性から重宝されたが、湖沼や河川などへの拡散が問題となっている。環境省は「要注意外来生物」の一種として「栽培にあたっては、逸出を起こさない」「既に野生化している湖沼等があり、在来種との競合・駆逐等のおそれがある場所については、積極的な防除または分布拡大の抑制策の検討が望まれる」として警戒を呼びかけている。

だそうで、見た目が美しいからといって許容できる状況ではないらしい。

 

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川底に丸い穴の目立つ場所があった。この穴を甌穴(おうけつ)といい、ポットホール、かめ穴とも呼称する。水流によってできた浅いくぼみに石が入り、流水や波の渦といっしょになってくぼみの中で回転し、円形の穴を形成する。それが甌穴だ。

 

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舞岡公園に入った。休耕田が野原のようになっている。川幅が狭くなり、水量もずいぶん減った。源流まであと少しだ。

 

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さくらなみ池の手前まで来た。このあたりを源流と見なしていいと思う。池から放流された水と、丘の斜面から流れ込む水が細い流れを形成している。

 

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周囲が150mほどのさくらなみ池は、農業用水として使われているのだろう。池の排水口から水路が築かれ、そのうちの一本が舞岡川とつながっている。

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さくらなみ池の水が、農業用水として水路に流れ出している。

 

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さくらなみ池の向かいにある宮田池はウシガエルのパラダイスだ。たくさんのおたまじゃくしが水草にもたれて身体を休め、モーモーという大人ガエルの鳴き声が、あちこちから聞こえていた。

(2021年5月記)