横浜の川を歩く6 黒須田川

黒須田川は川崎市麻生区を源流とし、横浜市青葉区を通って鶴見川に合流する準用河川である。横浜市道路局河川部が発行する冊子「横浜の川」では、市長管理部分の延長を2,820mとしている。これは、川崎市との市境から横浜市に入るすすき野3丁目を起点とした距離で、源流までの総延長は4,700mほどになる。

 

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 王禅寺日吉谷調整池。ここが源流のひとつと言ってよいだろう。案内板にも、黒須田川に流れ込むと書かれている。坂の下に川の始点がある。

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「日吉」交差点。ベージュ色の建物の向こうに調整池があり、右下の小薮から水が流れ出している。

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植物に隠れてわかりにくいが、ここが川の始まりだ。

 

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紅葉が始まった木々の向こうを流れている。源流の調整池から300m。

 

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家の左手は山だ。WEBで公開されている「地理院地図」によると、標高が83m程度ある。黒須田川は、その際を流れ下る。川のところが54mだから、標高差は約30mになる。

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山王社(日枝神社)の社殿前から下の道路を望む。階段で100段以上の高さだ。川は、道の向こう側を流れている。案内板によれば、山王社の祭神は大山咋神(おおやまくいのかみ)で、王禅寺村の鎮守五社のひとつである。

 

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源流から1500mほど下ると右手が開けた平地になり、畑が作られている。市民菜園だろうか。ここは独特な地形で、ワインボトルの底のように、中央が盛り上がっている。それが右手の小山で、東京都市大学原子力研究所がある。この山を中心にして、半円を描くように高台が周回し、その縁に沿って黒須田川が流れている。左下に水面が見える。平地は川崎市、高台は横浜市で、川が市境だ。

 

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道路の下をくぐって流出する。ここからが、横浜市長管理の準用河川なのだろう。

 

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風景が一変し、住宅地を貫いて直線的に流れる。国土地理院が提供する航空写真を見ると、1960年代の黒須田川は、細かく蛇行している。それが1974年以降の写真では、現在とほぼ同じ流れになっていることがわかる。おそらく1973年の土地区画整理事業のとき、黒須田川も整備されたのだろう。その後、都市再生整備計画に基づき2006年から2010年にかけて黒須田川周辺は再整備され、上・中流の遊歩道が完成した。今では下流域にも遊歩道が設置され、準用河川部分の約3kmを川に沿って散策することができる(1カ所を除く)。

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アーチ橋が風景に彩りを添えている。子金橋(こがねばし)だ。河口から500mの地点。

 

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支流が流れ込む。すぐ先でコンクリートに覆われた暗渠になっている。

 

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 エサを探して泳ぐマガモ。黒須田川には魚が少ないが、水辺の鳥は種類が多い。カルガモはもちろんのこと、この日はマガモの他にもキセキレイカワセミコサギを見た。

 

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河口付近には平地が広がり、農業地区になっている。「浜なし」が有名で、完熟した梨を直接消費者に届ける販売手段をとっているため、スーパーなどの店頭に並ぶことがほとんどない高級ブランドだ。取材した10月下旬は梨の時期ではなくて、柿が鈴なりだった。

 

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黒須田川河口を鶴見川サイクリングコースから撮影。振り向くと、そこが鶴見川だ。

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黒須田川の終点。鶴見川に合流する。

 

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黒須田川は準用河川で、横浜市長が管理者だ。

準用河川とは、一級河川及び二級河川以外の「法定外河川」のうち、市町村長が指定し管理する河川のことである。河川法に基づき、二級河川の規定を準用する(ウィキペディア)。

鶴見川一級河川だから国土交通大臣が管理する河川なのだが、掲示板には神奈川県管理と書かれている。国土交通省京浜河川事務所のホームページを見ると、国土交通省の管理区間は、河口から第三京浜道路までの17.4kmとなっている。日産スタジアム鶴見川多目的遊水池周辺の先までで、そこから上流は神奈川県が管理している。

 

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河口にはコサギの姿があった。黒須田川周辺は新興住宅地なので、史跡や寺社などが少ないが、野鳥の姿を楽しむことができ、すすき野3丁目からの3kmは遊歩道が整備されているから、散策するには格好の川だ。

(2020年10月記)